ネットワークエンジニアの就業形態
就業形態(正社員 or SES)
ネットワークエンジニアの就業形態は、「正社員」と「SESによる派遣/業務委託」の2種類があります。※就業形態はSESと同じような形ですが、SES会社に所属しない「フリーランス」という働き方もあります。
正社員
正社員として働く場合は、企業と直接契約して就業します。非IT企業の場合は、「社内SE」と呼ばれることもあり、ネットワーク以外にもPC等のOA系やセキュリティも含めて担当することが多いです。
SES(システムエンジニアリングサービス)
SES(システムエンジニアリングサービス)というサービスを提供している会社に所属して、実際には顧客企業で派遣/業務委託として就業します。※SES会社とは、正社員か契約社員として契約します。
フリーランス(個人事業主)
SES会社には所属せずに顧客企業と契約して就業します。開発エンジニアに比べて、ネットワークエンジニアのフリーランスの割合は大きくはありませんが、経験や能力によってはフリーランスも可能です。
ネットワークエンジニアは、圧倒的にSESとして働いているエンジニアが多いです。
SES(システムエンジニアリングサービス)の詳細
ここでは、SESとしてのネットワークエンジニアの働き方について詳しく説明します。
SES会社とは
ネットワークエンジニアに限らず、システムエンジニア全般として、SES(システムエンジニアリングサービス)という仕組みがあります。SESとは、エンジニアを雇用している企業(SES会社)から、顧客企業にエンジニアを派遣(契約としては、派遣or準委任)するビジネス形態です。SES会社は、日本に10,000社以上あると言われています。
SES会社を選ぶ際のポイントについては、下記のページを参照してください。
多重下請構造
SES会社からSES会社にエンジニアを派遣し、更に顧客会社に派遣される場合もあります。(二重派遣とならないように、SES会社(A)とSES会社(B)の間は派遣or準委任契約、顧客企業とSES会社(A)の間は請負or準委任契約が基本です。)
このような構造を『多重下請構造』と呼びます。※SES会社(B)から見たSES会社(A)を『上位会社』と呼びます。
SES会社への入社後
SES会社への入社後は、顧客企業と顔合わせを行ったうえで現場に配属されますが、「経験者」と「未経験者」で入社後の対応は異なります。
経験者の場合
経験者の場合、入社前に顧客企業と顔合わせを行い、配属先を決めることが多いです。入社後は、初日のみ契約関係や社内規則の説明のために、SES会社に出社します。翌日以降は、すぐに配属先で業務を開始します。
最近では、リモート環境が充実したこともあり、入社手続きや説明も入社前にリモートで行われ、初日から顧客企業で勤務する場合も多くなりました。
未経験者の場合
未経験者の場合、入社後に1〜3ヶ月程度の研修を受けることが多いです。研修は、SES会社内か研修会社で行われます。この研修の中で、ネットワークエンジニアとして最低限必要な知識を学びます。また、ネットワークベンダーであるCisco社の認定資格「CCNA」を取得することもあります。
その後、顧客企業と顔合わせを行い、配属先が決まります。時期やタイミングによっては、配属先が決まらず、数ヶ月の間、自社内での勤務となることがあります。この間は、PCキッティングや他の社員の手伝いなどの雑務に近い業務もあります。
SES会社によっては、即戦力となる「経験者」のみを採用している企業もあります。しかし、インフラエンジニアは比較的に未経験でも始めやすい職種のため、自社で教育する前提で「未経験者」を採用している企業も多いです。
SESの就業先
SES会社に所属するネットワークエンジニアの就業先(顧客企業)には様々な業種があります。
一般企業(非IT企業)の情報システム部門
一般的な企業(非IT企業)の情報システム部門に就業します。「社内SE」とも呼ばれ、ネットワークだけではなく、PC等のOA機器やセキュリティ関連も含めて運用を行うことが多いです。社内の他部門からの問い合わせに対応することも仕事の一つです。エンジニアとして、ネットワーク領域以外の経験を積むことができます。
SIerの基盤部門(インフラ部門)
「SI(エスアイ)」とは、「System Integration(システムインテグレーション)」の略称で、ユーザー企業に対して、システム開発や運用などを提供するサービスのことです。このサービスを提供する企業を「SIer(エスアイアー/エスアイヤー)」と呼んでいます。※「SIer」は、和製英語で日本でのみ使われている言葉です。
野村総合研究所(NRI)、NTTデータ、富士通、NEC等が、代表的なSIer企業です。
SIerの中では、対顧客部門と開発部門と基盤部門(インフラ部門)に分かれていて、ネットワークエンジニアは基盤部門に配属されます。SIerは、設計・構築から運用・保守まで、幅広い工程を手掛けていることが多く、ネットワーク領域の幅広い経験を積むチャンスがあります。
ネットワークベンダー
ネットワークベンダーとは、ネットワーク機器やソフトウェアを販売している企業です。機器メーカーだけではなく、複数のメーカーの機器を販売している企業も、ベンダーと呼ばれます。(販売代理店、販売パートナー)
また、機器の販売とセットで、機器導入〜運用・保守までを一括で提供している企業もあります。このようなサービス提供形態を「ワンストップサービス」と呼びます。
ネットワークエンジニアは、機器導入〜運用・保守を手掛けている部門に配属され、それぞれの工程の仕事を行います。そのため、経験や配属部門によって、経験できる工程は異なります。
ネットワークベンダーは、新しい技術を積極的に取り入れるため、最新の技術に触れる機会も多く、深い知識と技術を身に付けることができることができます。
通信キャリア
通信サービスを提供している企業です。NTT(系列会社を含む)、KDDI、ソフトバンクが3大キャリアと呼ばれています。エンタープライズ向けには、「Arcstar Universal One (NTTコミュニケーションズ)」、「Wide Area Virtual Switch 2 (KDDI)」、「Smart VPN (ソフトバンク)」等のサービスが提供されています。
3大キャリア以外では、ARTERIA(アルテリア・ネットワークス)、Colt(コルトテクノロジーサービス)、NURO(ソニービズネットワークス)なども、企業向けの通信サービスを提供しています。
通信キャリアも、SIerやネットワークベンダーと同様に、ネットワークの設計・構築〜運用・保守までを行っているため、エンジニアの経験や配属部門によって担当工程は異なります。主にWANを含めたサービスとしてネットワークが提供されることが多いため、WAN周りの技術には深く携わることができます。
データセンターの運用管理部門
データセンターの運用や監視サービス等を提供する管理部門です。運用や監視サービスを提供するオペレーターが大多数ですが、データセンターの設計から携わるような、上流工程のエンジニアも存在します。
データセンター業務では、ケーブル配線やキャリア設備等を見る機会が多く、他の業種と比較して物理面での知識を学ぶことができます。ネットワークエンジニアとして未経験の場合は、オペレーターからスタートして、徐々に上流工程(設計・構築)にステップアップすることが多いです。
客先常駐?自社勤務?
SESで働くネットワークエンジニアは、圧倒的に『客先常駐』という勤務形態が多いです。インフラエンジニアという職種の特性上、物理的な作業も必ず発生するため、持ち帰り開発が難しいからです。物理作業の例としては、新機器のキッティング作業、ローカル環境での検証作業、機器の設置・接続作業等があります。
また、運用保守(ネットワーク監視)の現場の場合は、NOCと呼ばれるネットワークオペレーションセンターに監視装置等があるため、『客先常駐』という勤務形態となります。
開発エンジニアに比べて、ネットワークエンジニア(インフラエンジニア)は、『客先常駐』の割合が大きいです。しかし、近年では、リモート勤務の環境が整ってきたこともあり、完全受託で自社勤務(orリモート勤務)ができる案件も増えてきています。
SESのメリット・デメリット
SES・正社員・フリーランスの比較
SESでの働き方について、様々な観点で正社員やフリーランスと比較します。
項目 | SES | 正社員 | フリーランス |
---|---|---|---|
安定性 | ○ | ◎ | △ |
就業先変更有無 | △ | ◎ | △ |
賃金 | ○ | △ | ◎ |
スキルアップ | ◎ | △ | ○ |
残業時間 | ? | ? | ? |
人間関係の構築 | ○ | ◎ | △ |
やりがい | ○ | ○ | ○ |
自社貢献 | △ | ○ | ー |
環境変化への耐性 | ○ | ○ | △ |
SESのメリット
- 安定性 (正社員 > SES > フリーランス)
-
顧客企業の予算次第で契約が打ち切りになることもあるため、意図せず就業先が変わる可能性はありますが、基本的には、SES会社が次の就業先をピックアップしてくれます。営業力にもよりますが、自社待機率は3%以下というSES会社もあり、それなりの経験・スキルがあれば就業先が見つからないということは少ないです。
フリーランスも、案件紹介会社に登録している場合は、SESと同じような安定性になります。
- 賃金 (フリーランス > SES > 正社員)
-
SESで働くネットワークエンジニアの賃金の幅は広いです。年収300万円代から、1000万円を超えるエンジニアもいます。意外かもしれませんが、例えば、設計工程のスペシャリストについては、派遣先企業の正社員よりも高い賃金を得ていることが多いです。
- スキルアップ (SES > フリーランス > 正社員)
-
SESエンジニアは、一つの現場で終わることは少なく、複数の現場を経験できるため、幅広い知識・スキルを身につけることができます。習得した知識・スキルを利用して、キャリアアップを図ることも可能です。
フリーランスについては、相当の知識・スキルを身につけたうえで独立することが多いです。そのため、これまでの経験・スキルを武器にするため、スキルアップを目的とする場合は、SESの方が有利です。
SESのデメリット
- 就業先変更有無 (正社員 > SES = フリーランス)
-
SES会社と就業先会社の都合で、就業先が変わることがあります。SES会社都合としては、事業戦略や利益率等の問題で別の現場での就業を求められる場合があります。就業先会社都合としては、予算問題やスキルアンマッチ(想定していたスキルと相違がある)等で契約を打ち切る場合があります。
そのため、一つの現場で長く勤務したいというエンジニアにとっては、正社員として就業した方が、希望にあう可能性が高いです。
- 自社貢献 (正社員 > SES)
-
「客先常駐」という就業形態が多いため、自社(SES会社)との関わりが少なくなる傾向があります。それに伴い、会社への帰属意識が薄くなるという問題があります。例えば、SES会社から一人で顧客先に常駐していると、周りのメンバーから刺激を受けることも少なくなり、モチベーションの低下につながることがあります。
「会社の成長に貢献したい!」と考えるエンジニアにとっては、やりがいが感じられなくなる可能性があります。(会社貢献を目的とする場合、その時々の顧客の目的に貢献するという考え方に変える必要があるかもしれません。)
「残業時間」や「やりがい」は、就業先や業務内容に大きく左右されるため、比較が難しいところです。残業時間については、顔合わせの時に確認するようにしましょう。(SES会社によっては、「顔合わせで想定残業時間は聞いてはいけない」と言われることがありますが、自身の就業環境に関するところですので、確認することをおすすめします。)