ネットワークエンジニアとして働き始めてから二〜三年程度が経過すると、「順調にステップアップしているのか?」「周囲と比べて遅れを取っていないか?」と不安や疑問を感じている人は数多くいると思います。
このページでは、ネットワークエンジニアが三年目に目指すべき姿について、4つのポイント【年収・業務内容・役割・資格】から解説します。客観的に自身の状況を見つめ直すことで、今後のキャリアプランに役立てられるような内容になっています。
本サイトは、実際に未経験からネットワークエンジニアに転職した管理者が運営しています。自身の実体験やプロジェクトマネージャとして数多くのエンジニアと仕事をした経験から、ネットワークエンジニアとしてステップアップを目指す方へ情報を発信しています。運営者の情報は下記を参照してください。
ネットワークエンジニアのキャリアパスと平均年収
はじめに、ネットワークエンジニアの「キャリアパス」と「平均年収」について説明します。
キャリアパス
ネットワークエンジニアが目指せるキャリア目標(ゴール)には以下のような職種があります。
- 技術系スペシャリスト
- ネットワークスペシャリスト 〜 ネットワーク特化のエンジニア
- クラウドスペシャリスト 〜 クラウド(AWS/Azure/GCP)特化のエンジニア
- インフラスペシャリスト 〜 ネットワーク&サーバーを扱えるエンジニア
- フルスタックエンジニア 〜 ネットワーク&クラウド&サーバーを扱い、開発(プログラミング)もできるエンジニア
- プロジェクト管理職
- プロジェクトリーダー 〜 プロジェクトを技術的にリードする役割
- プロジェクトマネージャー プロジェクトの遂行責任を持つ役割
- 組織管理職
- グループマネージャー 〜 複数プロジェクトを束ねて管理する役割
- 課長、部長、 etc… 〜 広範囲のプロジェクトやグループの責任を持つ役割
ネットワークエンジニアのキャリアパスについては、下記のページで詳しく解説しています。
どのようなゴールを目指すにせよ、ネットワークエンジニアになって三年というのは、一つの区切りとなります。基本的な知識・技術を身に付け、キャリアパスを考え始める時期です。
この時期に将来のキャリアプランを明確にし、どのようなキャリアパスを辿るかを模索しながら、五年目くらいに各々のゴールに向けて分岐していくイメージです。
平均年収
「doda職種図鑑」によると、ネットワークエンジニアの平均年収は約450万円となっています。
年収の分布は下記の通りで、400万円〜600万円がボリュームゾーンです。
ネットワークエンジニアは、「運用・保守・監視」を担当するエンジニアが圧倒的に多いため、上流工程の「設計・構築」や「企画・提案」などの業務にステップアップできれば、平均年収を大きく超えることができます。
- 設計・構築:500〜800万円
- 企画・提案:700〜900万円
年収の幅が大きいのは、経験年数、役割(メンバー、リーダー、マネージャ)、就業形態(SES、フリーランス)、就業先(事業会社、SIer)によって異なるためです。
三年目に目指すべき姿の4つのポイント
ネットワークエンジニアが三年目に目指すべき姿を4つのポイント【年収・業務内容・役割・資格】に沿って説明します。ネットワークエンジニア三年目の人は、各ポイントごとに自身の現状と照らし合わせてみましょう。現状と乖離があるようであれば、今後のキャリアに影響が出る可能性があるため、軌道修正を行う必要があるかもしれません。
年収
まずは、一番気になるであろう年収からです。
ネットワークエンジニア三年目の年収の目安としては、350万円〜400万円(正社員の場合)です。これよりも多くもらっている人もいますが、運用・保守がメインであれば、このくらいの年収が目安となります。もし500万円以上の年収を得ていれば、平均以上で順調と言って良いでしょう。
雇用形態や給与体系別の例
- 正社員
- 月給:25万円
- 賞与:75万円(3ヶ月分)
- 年収:375万円
- 正社員(還元率型SES) ※還元率70%の場合
- 顧客単価:45〜50万円
- 月給:31.5~35万円
- 年収:378〜420万円
- フリーランス
- 顧客単価(=月給):35〜40万円
- 年収:420〜480万円
- フリーランスは正社員より手取り額が少なくなるため、高めに見積もっています。
- 派遣
- 時給:2000円
- 月給:32万円
- 年収:384万円
- 同じ派遣でも契約形態によっても手取り額は異なるため、あくまで参考としてください。
※還元率型SESの詳細は、下記を参照してください。
年収が目安に達していない方(〜300万円代の前半までの方)は、どうすれば給与アップができるか、しっかりと上司に確認しましょう。状況によっては、転職も視野に入れる必要があります。
業務内容
「運用・保守・監視」と「設計・構築」に分けて、ネットワークエンジニア三年目で実施しているべき業務内容(業務レベル)を説明します。案件によって当てはまらないものもあると思いますが、どの程度実施できているかのチェックリストとして確認してみてください。
ネットワークエンジニア三年目の業務レベル
- 運用・保守・監視
- 日次や月次などで繰り返し行う定型作業は、下位者を教育して実施させることができる
- 数ヶ月に一度など、頻度の低い定型作業も問題なく対応できる
- ネットワーク環境の理解が必要なイレギュラー作業(非定型作業)も実施できる
- 障害が発生した際に自発的にネットワーク調査を行い上位者に報告できる
- ネットワークに関連する運用上の課題を発見し、上位者ともに解決できる
- チームリーダーとして、下位者のタスク管理や成果物のレビューを実施できる
- ユーザーからの問い合わせに定型文ではなく、自身の考えで回答できる
- 設計・構築
- TCP/IP通信の基本的な仕組みを顧客に説明できる
- DHCP/ARP/DNSなどの仕組みを理解できている
- ダイナミックルーティングプロトコルを使用した小規模ネットワークを構築できる
- OSPF/BGP/EIGRPなどの設定をWeb検索しながら実施できる
- L2/L3レベルで冗長化された小規模ネットワークを構築できる
- STP/HSRPなどの冗長化プロトコルの設定をWeb検索しながら実施できる
- 上位者が実施した設計書をもとにネットワーク機器のコンフィグが作成できる
- 既存ネットワークへの機器追加程度であれば、既存環境を参考に設計ができる
- 検証(テスト)計画をもとに検証環境を構築し、項目に沿ってテストを独力で実施できる
- 検証中に発生した想定外事象に対して、解決策を提示できる
- TCP/IP通信の基本的な仕組みを顧客に説明できる
この業務レベルに達していない場合は、三年目としては経験が足りない可能性もあります。その場合は、上位者と相談して、業務の幅を広げられるようにチャレンジしましょう。
役割
対応している業務内容だけではなく、役割(立ち位置)も今後のキャリアプランを考える上で重要です。運用・保守の現場であれば、少人数(3〜5人程度)のチームリーダーとしての経験が欲しいところです。
まだリーダー業務を行えていない場合は、リーダーになるための条件を確認し、着実にステップアップできるようにしましょう。将来的にマネジメント系の職種(プロジェクトマネージャ)ではなく、技術系のスペシャリストを目指していたとしても、リーダーを経験するメリットは数多くあります。
チームリーダーを経験するメリット
チームリーダーになると他者の成果物を確認する機会が多くなります。いつもとは違う観点でチェックを行いながら修正点や改善点を見つけることで、どのような資料を作ると見やすくなるかなど、自身の業務にも活かすことができます。
少人数のチームでも、基本的なマネジメント方法を学ぶことができます。「案件の進捗管理」「メンバーのタスク管理」「チームの課題管理」など、管理するうえで重要なことは多くあります。
また、チーム全体の状況確認や共有のために定例会を行ったり、各メンバーと1on1ミーティングを行ったりすることで、コミュニケーション方法を学ぶこともできます。
チームリーダーを経験すると、市場価値が上がります。案件の中での役割として「メンバー」だけではなく、「リーダー」の経験が職務経歴上にあると、客観的な顧客からの評価は確実に上がります。
希望する業務内容の案件に出会えるだけではなく単価アップにもつながるため、どこかのタイミングでリーダーを経験しておくことは、エンジニアとしてステップアップするためにとても重要です。
資格
ネットワークエンジニアとして三年目で取得したい資格は「CCNP」です。※「CCNA」は、1〜2年目で取得していることが前提です。
CCNPは、Ciscoの中では、プロフェッショナルレベルに位置付けられている資格です。多くのネットワークエンジニアが「CCNA」の取得までで止まるため、「CCNP」を持っていると目を引くことができます。今後の案件選択の幅を広げる意味でも、CCNPを取得しておくことをオススメします。
CCNPを取得済みの方は、今後のキャリアプランにもよりますが、情報処理技術者試験のネットワークスペシャリスト、AWSのソリューションアーキテクトアソシエイトの取得を目指しましょう。
私はプロジェクトマネージャとして業務を行なっている時、チームを作るために数百人のネットワークエンジニアと面談をしてきましたが、書類選考の段階で、CCNPを持っている方は無条件で面談を行なっていました。それだけ、ネットワークエンジニアの中でもCCNPを持っている方は多くはありませんでした。
「資格取得の意義(資格の必要性)」は、よく議論される話ですが、絶対に資格は取得しておいた方が良いです。資格だけではエンジニアの技術力は分からないですが、資格を持っていないと選定の枠に入れないことも多くあるからです。
※開発エンジニアは自身のポートフォリオを持つことで技術力をアピールできますが、ネットワークエンジニアは経歴だけで客観的に技術力をアピールすることが難しいです。
キャリア目標をしっかりと持つことが重要
三年目を一つの節目として、一度立ち止まって考えてみましょう!
繰り返しになりますが、将来的にどのようなエンジニアになりたいかをイメージすることはとても大切です。はじめは右も左もわからず必死で頑張っていた人も、二〜三年を経過すると周りの状況も見えてくるため、不安や悩みも大きくなります。
そのようなときに、「どんなスキルを持ったエンジニアになりたいか?」でも良いですし、「エンジニアとしてどのくらい稼ぎたいか?」でも良いので、一度立ち止まって考えてみましょう。
下記のページでは、「ネットワークエンジニアのキャリアパス(キャリア目標)」と「そこにたどり着くまでのロードマップ」を解説しています。一口にネットワークエンジニアと言っても、多くのキャリアパスがあります。これもネットワークエンジニアの良いところだと思います。