Cisco機器のARPテーブルのタイムアウト値とタイムアウト後の動作の詳細について説明します。
ARPテーブルの確認方法等の基本については、下記を参照してください。
ARPテーブルの保持時間
保持時間(タイムアウト値)の詳細
ARPテーブルのタイムアウト値をデフォルトの4時間(240分)に設定しているにも関わらず、Age(min)が240を超えることがあります。これは、ARP要求が多発することによるブロードキャストストームを防ぐために、ジッター値(0分〜30分)がタイムアウト値に追加されるためです。
Router1#show arp
Protocol Address Age (min) Hardware Addr Type Interface
Internet 192.168.1.1 252 5254.000d.76ee ARPA GigabitEthernet0/0
Internet 192.168.1.254 - 5254.001b.dd5f ARPA GigabitEthernet0/0
コンフィグに設定されているタイムアウト値により、実際に設定される期限切れタイマーは下記の通りとなります。
タイムアウト値 | 期限切れタイマー | 期限切れタイマー超過後の動作 |
---|---|---|
0秒 | 無し | タイムアウトしない |
1秒〜59秒 | タイムアウト設定値 + ジッター値(0分〜30分) | 対象IPアドレスにARP要求を送信 →応答が無ければARPテーブルから削除 |
60秒〜179秒 | タイムアウト設定値 – 1分 + ジッター値(0分〜30分) | 対象IPアドレスにARP要求を送信 →応答が無ければ1分後に再度ARP要求を送信(リトライ1回) →応答が無ければARPテーブルから削除 |
180秒〜 | タイムアウト設定値 – 2分 + ジッター値(0分〜30分) | 対象IPアドレスにARP要求を送信 →応答が無ければ1分後に再度ARP要求を送信(リトライ2回) →応答が無ければARPテーブルから削除 |
ARPテーブル追加時の期限切れタイマー設定
下記のデバッグを有効にして、ARPテーブル追加時の動作を確認します。
debug arp table
debug arp timer
ARPテーブルに追加されると、下記のログが表示されます。
03:38:37.661: ARP TABLE: modifying entry 192.168.1.1/5254.000d.76ee on Gi0/0 for Dynamic tableid 0
03:38:37.663: ARP TMR: start timer of 14280000 msec on 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0, tableid 0with jitter (total delay of 15884684 msec)
start timer of 14280000 msec
→ まず、タイマー値として「14280000ミリ秒 = 14280秒 = 238分」が選択されます。※タイムアウト設定値 – 2分
with jitter (total delay of 15884684 msec)
→ ジッター値が追加され、合計タイマー値として「15884684ミリ秒 ≒ 264分」となっています。
ARPテーブルの保持時間超過後(タイムアウト時)の動作
ARPテーブルの保持時間を超過した後の動作は、コンフィグに設定されているARPタイムアウト時間によって異なります。
ARPタイムアウト時間の確認・変更方法は下記を参照してください。
タイムアウト設定値が1秒〜59秒の場合
RouterのARPテーブルのAgeが期限切れタイマーを超過します。
デバッグログの確認
07:26:13.722: ARP TMR: inner timer expired on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
Routerは対象のIPアドレスに対してARP要求を送信します。
デバッグログの確認
07:26:13.722: IP ARP: sent req src 192.168.1.254 5254.001b.dd5f,
dst 192.168.1.1 5254.000d.76ee GigabitEthernet0/0
ARP応答があった場合は、ARPテーブルを更新します。
ARP応答が無かった場合は、ARPテーブルから削除します。
デバッグログの確認
07:26:13.724: ARP TABLE: deleting entry 192.168.1.1/5254.000d.76ee on Gi0/0 tableid 0
タイムアウト設定値が60秒〜179秒の場合
RouterのARPテーブルのAgeが期限切れタイマーを超過します。
デバッグログの確認
07:27:43.887: ARP TMR: inner timer expired on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
Routerは対象のIPアドレスに対してARP要求を送信します。
デバッグログの確認
07:27:43.887: IP ARP: sent req src 192.168.1.254 5254.001b.dd5f,
dst 192.168.1.1 5254.000d.76ee GigabitEthernet0/0
ARP応答があった場合は、ARPテーブルを更新します。
ARP応答が無かった場合は、リトライタイマー(1分/60秒/60000ミリ秒)をセットします。
デバッグログの確認
07:27:43.889: ARP TMR: start timer of 60000 msec on 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0, tableid 0without jitter
07:27:43.890: ARP TMR: inner timer of 60000 msec started on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
60秒のリトライタイマーの経過後、対象のIPアドレスに対してARP要求を送信します。
デバッグログの確認
07:28:44.338: ARP TMR: inner timer expired on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
07:28:44.338: IP ARP: sent req src 192.168.1.254 5254.001b.dd5f,
dst 192.168.1.1 5254.000d.76ee GigabitEthernet0/0
ARP応答が無かった場合は、ARPテーブルから削除します。
デバッグログの確認
07:28:44.340: ARP TABLE: deleting entry 192.168.1.1/5254.000d.76ee on Gi0/0 tableid 0
タイムアウト設定値が180秒〜の場合 ※Ciscoデフォルトは14400秒(240分/4時間)
RouterのARPテーブルのAgeが期限切れタイマーを超過します。
デバッグログの確認
07:30:22.684: ARP TMR: inner timer expired on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
Routerは対象のIPアドレスに対してARP要求を送信します。
デバッグログの確認
07:30:22.684: IP ARP: sent req src 192.168.1.254 5254.001b.dd5f,
dst 192.168.1.1 5254.000d.76ee GigabitEthernet0/0
ARP応答があった場合は、ARPテーブルを更新します。
ARP応答が無かった場合は、リトライタイマー(1分/60秒/60000ミリ秒)をセットします。
デバッグログの確認
07:30:22.686: ARP TMR: start timer of 60000 msec on 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0, tableid 0without jitter
07:30:22.687: ARP TMR: inner timer of 60000 msec started on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
60秒のリトライタイマーの経過後、対象のIPアドレスに対してARP要求を送信します。
デバッグログの確認
07:31:23.127: ARP TMR: inner timer expired on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
07:31:23.128: IP ARP: sent req src 192.168.1.254 5254.001b.dd5f,
dst 192.168.1.1 5254.000d.76ee GigabitEthernet0/0
ARP応答が無かった場合は、リトライタイマー(1分/60秒/60000ミリ秒)をセットします。
デバッグログの確認
07:31:23.130: ARP TMR: start timer of 60000 msec on 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0, tableid 0without jitter
07:31:23.131: ARP TMR: inner timer of 60000 msec started on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
60秒のリトライタイマーの経過後、対象のIPアドレスに対してARP要求を送信します。
デバッグログの確認
07:32:23.574: ARP TMR: inner timer expired on entry 192.168.1.1 on GigabitEthernet0/0 tableid 0
07:32:23.574: IP ARP: sent req src 192.168.1.254 5254.001b.dd5f,
dst 192.168.1.1 5254.000d.76ee GigabitEthernet0/0
ARP応答が無かった場合は、ARPテーブルから削除します。
デバッグログの確認
07:32:23.576: ARP TABLE: deleting entry 192.168.1.1/5254.000d.76ee on Gi0/0 tableid 0
以上で、【Cisco】ARPテーブルの保持時間の詳細(ジッター値追加とリトライ回数)の説明は完了です!