Cisco機器のNAT設定 | 静的NAT(スタティックNAT – ip nat outside source ② ※no-alias設定が必要な場合 )

Cisco機器のNAT設定 | 静的NAT(スタティックNAT - ip nat outside source ② ※no-alias設定が必要な場合 )

Cisco機器の静的NAT(スタティックNAT)の概要と、 外部送信元アドレスのNAT(ip nat outside source)において、no-aliasオプションが必要な場合について説明します。

NATの概要については、下記を参照してください。

目次

Cisco機器の基本的なNATの設定

Cisco機器では、下記の設定を行うことで、NATを行うことができます。

  1. インターフェースを内部ネットワーク(inside)か外部ネットワーク(outside)に設定する
  2. NAT対象とするネットワーク(内部or外部)と変換前後のIPアドレスを設定する
STEP
インターフェースを内部ネットワーク(inside)か外部ネットワーク(outside)に設定する
インターフェースを内部ネットワーク(inside)か外部ネットワーク(outside)に設定
STEP
NAT変換前とNAT変換後のIPアドレスを設定する
NAT変換前とNAT変換後のIPアドレスを設定

外部送信元アドレスの変換 | ip nat outside source

ネットワーク構成

下記のネットワーク構成を例に、具体的なNAT設定について説明します。ここでは、外部サーバーのIPアドレスを”200.200.1.1″から”192.168.1.10″に変換します。※”192.168.1.10″は、inside側のセグメント内のアドレスです。

ネットワーク構成

NATとルーティングの順序

NATとルーティングの順序に関しては、下記のルールがあります。外部送信元をNATする場合、insideからoutsideへのルーティングを考慮する必要があります。

inside側からoutside側への通信outside側からinside側への通信
「ルーティング」→「NAT」の順序で処理される「NAT」→「ルーティング」の順序で処理される

詳細に関しては、下記を参照してください。

通信NGとなる設定(スタティックルートが正しく反映されない)

ルーティングを考慮して下記の設定を行っても、ルーティングテーブルにスタティックルートが反映されず、通信がNGとなります。

# Gi0/0をinsideに指定
interface GigabitEthernet0/0
 ip nat inside

# Gi0/1をoutsideに指定
interface GigabitEthernet0/1
 ip nat outside

# outside側の送信元アドレス"200.200.1.1"を"192.168.1.10"に変換する
ip nat outside source static 200.200.1.1 192.168.1.10

# insideからoutsideへの通信に必要なルーティングの設定
ip route 192.168.1.10 255.255.255.255 200.200.1.1

NATルーターのルーティングテーブルを確認します。

Router#show ip route

      192.168.1.0/24 is variably subnetted, 3 subnets, 2 masks
C        192.168.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/0
L        192.168.1.10/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
L        192.168.1.254/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
      200.200.1.0/24 is variably subnetted, 2 subnets, 2 masks
C        200.200.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/1
L        200.200.1.254/32 is directly connected, GigabitEthernet0/1

“192.168.1.10”は、ルーター自体のアドレス(L:Local)として、認識されていることがわかります。そのため、内部サーバーからの戻り通信は、ルーター自体が受け取ってしまいます。

通信の流れ(outside→insideへの通信) ※通信OK
STEP
外部サーバーから通信開始

外部サーバーから内部サーバー宛に通信が開始されます。

外部サーバーから通信開始
STEP
NATルーターにパケットが到達

NATルーターにパケットが到達します。

NATルーターにパケットが到達
STEP
NAT変換処理

送信元アドレスをNAT変換します。

NAT変換処理
STEP
ルーティング処理

送信先ネットワークに対して、ルーティング処理が行われます。

ルーティング処理
STEP
内部サーバーにパケットが到達

内部サーバーにパケットが到達します。

内部サーバーにパケットが到達
通信の流れ(inside→outsideへの通信) ※通信NG
STEP
内部サーバーから通信開始 ※戻り通信(応答パケットの送信)

外部サーバーから内部サーバー宛に通信が開始されます。

内部サーバーから通信開始 ※戻り通信(応答パケットの送信)
STEP
NATルーターにパケットが到達

NATルーターにパケットが到達します。

NATルーターにパケットが到達
STEP
ルーティング処理 ※ここで通信がNGとなる

「192.168.1.10」は、NATルーター自身のアドレスと認識しているため、ルーティング処理は行われず、外部サーバーにパケットは転送されません。

ルーティング処理 ※ここで通信がNGとなる

NATアドレスがLocalアドレスと認識される理由(Aliasの自動生成)

NATアドレスが、ルーターと直接接続されているセグメント内のアドレスの場合、ARPに応答するために、自動的にエイリアスアドレス(IP-Alias)が生成されます。※「inside global」や「outside local」のアドレスが対象となります。

エイリアスアドレスは、下記のコマンドで確認できます。

show ip alias
Router#show ip alias
Address Type             IP Address      Port
Dynamic                  192.168.1.10
Interface                192.168.1.254
Interface                200.200.1.254

動的(Dynamic)アドレスとして、「192.168.1.10」が登録されていることがわかります。

通信OKとなる設定 (no-aliasオプション)

NAT設定に「no-alias」オプションを追加することで、動的なエイリアス作成が行われず、通信可能となります。

# Gi0/0をinsideに指定
interface GigabitEthernet0/0
 ip nat inside

# Gi0/1をoutsideに指定
interface GigabitEthernet0/1
 ip nat outside

# outside側の送信元アドレス"200.200.1.1"を"192.168.1.10"に変換する (no-aliasを追加)
ip nat outside source static 200.200.1.1 192.168.1.10 no-alias

# insideからoutsideへの通信に必要なルーティングの設定
ip route 192.168.1.10 255.255.255.255 200.200.1.1

NATルーターのルーティングテーブルを確認します。

Router#show ip route

      192.168.1.0/24 is variably subnetted, 3 subnets, 2 masks
C        192.168.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/0
S        192.168.1.10/32 [1/0] via 200.200.1.1
L        192.168.1.254/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
      200.200.1.0/24 is variably subnetted, 2 subnets, 2 masks
C        200.200.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/1
L        200.200.1.254/32 is directly connected, GigabitEthernet0/1

設定通りにスタティックルートが表示されていることがわかります。

通信の流れ(outside→insideへの通信) ※通信OK
STEP
外部サーバーから通信開始

外部サーバーから内部サーバー宛に通信が開始されます。

外部サーバーから通信開始
STEP
NATルーターにパケットが到達

NATルーターにパケットが到達します。

NATルーターにパケットが到達
STEP
NAT変換処理

送信元アドレスをNAT変換します。

NAT変換処理
STEP
ルーティング処理

送信先ネットワークに対して、ルーティング処理が行われます。

ルーティング処理
STEP
内部サーバーにパケットが到達

内部サーバーにパケットが到達します。

内部サーバーにパケットが到達
通信の流れ(inside→outsideへの通信) ※通信OK
STEP
内部サーバーから通信開始 ※戻り通信(応答パケットの送信)

外部サーバーから内部サーバー宛に通信が開始されます。

内部サーバーから通信開始 ※戻り通信(応答パケットの送信)
STEP
NATルーターにパケットが到達

NATルーターにパケットが到達します。

NATルーターにパケットが到達
STEP
ルーティング処理

送信先ネットワークに対して、ルーティング処理が行われます。

ルーティング処理
STEP
NAT変換処理

送信先アドレスをNAT変換します。

NAT変換処理
STEP
外部サーバーにパケットが到達

外部サーバーにパケットが到達します。

外部サーバーにパケットが到達

以上で、「Cisco機器のNAT設定 | 静的NAT(スタティックNAT – ip nat outside source ② ※no-alias設定が必要な場合 )」の説明は完了です!

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